九州農業試験場ニュース No.51,1992                              
  海外見聞  

中国農業科学院遺伝育種研究者会議に出席して

水田利用部 耐性育種法研究室 小川 紹文  

 1991年9月18日から22日まで中国国際文化交流中心の招きで中国を訪問する機会をえた。中国国際文化交流中心は民間団体で,諸外国との文化交流を行う際の資金を統括している。外貨の少ない中国から招待をうけるということ,また民間団体からの招待ということが初めての事例であり関係者に多大の御迷惑をおかけした。この紙面をかりて謝意を表したい。
 実際には中国農業科学院作物育種栽培研究所(北京)の章g教授の招きによるものであった。中国側からの招きであるから文句は言えないが北京滞在中は全て講演と話し合いに終始し,こちらの希望は受け入れられる時間がなかった。
 今回の会議「稲病害抵抗性遺伝育種研究者会議」は小生の講演のために特別に開催設定されたもので,日本の稲病害抵抗性特に白葉枯病・いもち病抵抗性の遺伝研究及び育種方法についての情報を要望している。この会議の参加者は28名であったが,ほとんど実際の研究業務に従事している第一線の研究者であった。このような同じ研究をしている研究者が一同に会するのは初めてであるとのことであった。
 中国においては,いもち病と並んで白葉枯病が重要病害であり,過去5年間にわたる両病害抵抗性の遺伝分析に関する特別プロジェクトの結果として,日本との共同研究の必要性が認識されたとのことであった。世界的にはフィリピンにある国際稲研究所(IRRI)がアジアの稲作研究をリードしている(日本はアジアの研究者にたいして影響力は小さい)が,中国は日本と似通った気候であるということで日本の農業研究及び共同研究に対する中国の期待が大きかった。結果として,情報交換及び材料の交換また共同(研究者の交換を含む)についての要望がほとんどの研究者より述べられたが,情報交換については直ちに可能であるが,共同研究については,両国間の科学協力会議等で公に認められる必要があることを強調した。
 中国は稲の栽培に関して,いわゆる日本型と印度型の稲及びF1雑種を作付けしており,種々の病菌レースや虫のバイオタイプの分布について興味深く,またそのような環境条件下でどのような抵抗性素材が有効かを検証するのに適した国と考えられる。日本と中国の研究者がより自由に共同研究できるようになることを望みたい。アジアの研究者に対する日本の影響力がIRRIに比して格段に小さい主な原因はこの研究者間の交流が少ないことによると考えられる。
 中国は二回目の訪問で,最初は杭州・広州と南中国で人が多く雑然とした印象が強かったが,北京は道路も格段に広く,これから発展する感じの都市であった。参考までに北京にいく場合には万里の長城に一日,北京近郊で一日は必要との現地の人の言があったが,聞くのが遅すぎた。
 研究所の施設等は旧式の機器が多く,たまに立派な機器を訪ねてみると日本等の援助によるものが多かった。実際の農業現場の環境からすれば日本の研究者が日本で研究するより,はるかに農業研究そのものに貢献できるという印象が強く,機器類の貢献と同時に研究者が貢献できるような環境が速くくることを希望したい。


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