土壌の硬化特性
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土壌資源利用研 久保寺 秀夫 九州には,火山灰を母材とする黒ボク土,河川堆積物を母材とする灰色低地土やグライ土,岩石が風化し生成した赤黄色土など,多様な土壌が分布しています。 土壌は,乾燥や圧密に伴い硬化します。また,土壌生成過程で生じた接着物質などにより硬化する場合もあります。これらの硬化現象の機構や硬化が生じる条件,各種土壌の間での硬化強度の違いなどを解明することは,農耕地で適切な土壌管理を行う上で非常に重要です。私は九州の土壌について,特に乾燥に伴う硬化特性に着目し,以下のような一連の研究を行って来ました。 1.火山灰土壌の硬化特性 火山灰土壌(黒ボク土)は,軽しょうで耕しやすく,保水性や排水性が高いなど,物理性の面で優れた土壌ですが,一部の黒ボク土は乾燥に伴い著しく硬化します。阿蘇周辺に見られる,このような性質の黒ボク土(通称「ニガ土」)の諸性質を調べ,九州の他の地域に分布する硬化火山灰土壌や,通常の黒ボク土と対比しました。その結果,以下のことがわかりました。 1) ニガ土は,通常の黒ボク土と同様の理化学的性質を持つが,乾燥すると著しく硬化し,その土塊を水に漬けても崩壊しない点が通常の黒ボク土と異なる。 2) 九州に見られる硬化火山灰土壌は,2つのタイプに大別される。1つはニガ土のように乾燥した時のみ硬化するもの(仮称タイプ1),もう1つは湿った状態 でも硬いもの(仮称タイプ2)である。タイプ1は通常の黒ボク土と同様の理化学性を持っており,土壌生成作用の影響下でできてきた土と考えられる。タイプ 2は通常の黒ボク土とは粒径組成,仮比重,炭素含量などが異なっており,火山灰が堆積した直後に熔結作用などが生じて固まったものと考えられる。
2.九州の各種土壌の硬化強度と微細形態
黒 ボク土,赤色土,陸成未熟土など,九州に分布する各種の土壌について,乾燥に伴う硬化の度合いを調べました。硬化の度合いは土壌の種類によって大きく異な りました。乾燥した状態での,土壌中の粒子や孔隙の量,形および連続性(微細構造)を顕微鏡で観察すると,硬化が著しい土壌は孔隙の量が少なく,孔隙同士 がつながり合っていない構造だったのに対し,硬化しない土壌は孔隙の量が多く,孔隙同士がつながり合う構造を持つという特徴がありました。 関連の発表論文等:
3.南西諸島における土壌の硬化と有機物施用の関係
沖
縄県および鹿児島県の南西諸島には,ジャーガル(陸成未熟土),島尻マージ(暗赤色土),国頭マージ(赤色土,黄色土)と呼ばれる土壌が分布しています。
これらはいずれも,保水性,排水性,硬化性,粘着性などの,物理的な性質に問題のある土です。土壌の物理性改良には,一般に,堆肥などの有機物施用が有効
な手段です。しかし私が行った試験によると,南西諸島の土壌の一部では,堆肥を施用した場合に,乾燥に伴う硬化の度合いの増大(物理性の悪化)が起こりま
した。この現象が起こる条件や,その機構を解明するために,研究を継続中です。この研究により,南西諸島において,有機物資材を最大限に活用した土壌物理
性改良を行うための知見を得たいと考えています。
4.土壌の硬化とpHの関係 沖縄本島中央部の宜野座村の海岸段丘には,pH(H2O) が4.0以下から7.9以上までと多様なマージ土壌が分布しています。この地域で43地点の畑から土壌を採取し,乾燥時の硬化の度合いを調べました。その 結果,pHの高い(アルカリ性)土壌ほど強く硬化することがわかりました。この傾向は,九州本島の黄色土や赤色土でも同様でした。この原因は,pHが高い場合には土壌粒子表面の物理化 学
的状態(荷電など)が,何らかの作用を介して硬化を促進していることと考えられます。また,アルカリ性の土壌には多量の交換性カルシウムが含まれますが,
このカルシウムには乾燥に伴う土の収縮を助長する効果があるため,その作用が土をさらに硬くしていることが分かりました。日本の土壌には酸性が強いものが多いので,石灰などを入れて酸性を矯正することが農業上必要ですが,石灰を入れすぎると微量要素欠乏やそうか病などの土壌 病害発生を招くだけでなく,土壌硬化の問題にもつながります。そのため,土壌のpHをしっかり把握して土壌管理を行うことが重要と言えます。 関連の発表論文等:
5.クリンカアッシュの施用による重粘土壌の硬化緩和 沖縄本島で入手できる地域資源資材として,火力発電所から排出される石炭灰の粗粒画分であるクリンカアッシュに着目しました。クリンカアッシュをジャーガルに混和して硬化強度を測定すると,混和量に応じて硬化強度は減少し,その効果は同量の川砂よりも優れていました。またクリンカアッシュの施用は,土壌の有効水分量を増大させるという,砂には見られない効果も発揮しました。レタスを供試したポット栽培試験で,クリンカアッシュ施用により重金属含量など作物体の無機成分に問題は生じませんでした。
栽培試験の結果や施用コストなどを勘案すると,露地畑にクリンカアッシュを施用する場合の適正な量は重量比で土壌の10%(作土深15cmとすると10aあたり24t程度)と考えられました。クリンカアッシュの塩分濃度が高い場合は,灌水などで除塩する必要があります。関連の発表論文等:
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