4.紫サツマイモの機能性

 紫サツマイモに認められた多様な機能性

 紫サツマイモおよび紫サツマイモに含まれているアシル化アントシアニンには、様々な機能性があります(表4-1)。これら機能性の中から、代表的な機能性について特筆します。

表4-1 紫サツマイモの健康機能性

評価レベル 機   能
 試験管内レベル  抗酸化作用
   スーパーオキサイドラジカル消去活性
   DPPHラジカル消去活性
   t-BuOOラジカル消去活性
   LDL酸化抑制など)、
 抗変異原作用
 アンジオテンシン I 変換酵素阻害作用
 α-グルコシダーゼ阻害作用 など
 実験動物レベル  血中抗酸化能上昇
 酸化ストレス回避効果
 肝障害軽減効果
 血糖値上昇抑制効果
 血管弛緩作用
 血流量増加作用
 血液サラサラ効果
 血圧上昇抑制効果 など
 ヒトレベル  肝機能改善効果
 血圧上昇抑制効果
 便通促進効果
 精神機能向上効果
 血液サラサラ効果 など


上記機能は、紫サツマイモおよび紫サツマイモアントシアニンにて確認された機能性であり、他の農作物のアントシアニン類(約400種存在)でも同様な機能があるとは保証していません。

機能性があるからとiいって、濃縮物等で一度に多量に摂取することは逆に健康を損なう恐れがあります。適切な量を通常の食事形態で継続して摂取することを勧めます。

参考文献等
  1. 紫サツマイモの生理機能
      吉元誠, 山川理, 須田郁夫
    食品と開発, 33(8), p15-17 (1998)

  2. 高アントシアニンサツマイモの開発と利用
      山川理, 須田郁夫, 吉元誠
    Foods & Food Ingredients Journal of Japan, No.178, p69-78 (1998)

  3. 近年の食スタイルから見たサツマイモの生活習慣病予防効果
      須田郁夫, 吉元誠, 山川理
    Foods & Food Ingredients Journal of Japan, No.181, p59-69 (1999)

  4. サツマイモの一般成分と機能性
      須田郁夫
    「地域農産物の品質・機能性成分総覧」(津志田藤二郎・安井明美・東尾久雄・関谷敬三・須田郁夫編)、サイエンスフォーラム(東京), pp380-383 (2000)

  5. 紫サツマイモジュースの開発と機能性
      須田郁夫
    「アントシアニン−食品の色と健康」(大庭理一郎・五十嵐喜治・津久井亜紀夫編), 建帛社(東京), p201-208 (2000)

  6. 有色サツマイモ
      須田郁夫
    「大地からの健康学:地域特産と生活習慣病予防」(篠原和毅・近藤和雄監修), 農林統計協会(東京), pp186-191 2001)

  7. アントシアニン・プロアントシアニジン含有農作物の機能性と利用
      須田郁夫
    農林水産技術研究ジャーナル, 25(7), p30-35 (2002)

  8. Physiological functionality of purple-fleshed sweet potatoes containing anthocyanins and their utilization in foods
      Suda I., Oki T., Masuda M., Kobayashi M., Nishiba Y., Furuta S
    JARQ (Japan Agricultural Research Quarterly), 37(3), p167-173 (2003)

  9. 紫サツマイモ
      須田郁夫
    「色から見た食品のサイエンス」(高宮和彦, 大澤俊彦, グュエン・ヴァン・チュエン, 篠原和毅, 寺尾純二編), サイエンスフォーラム(東京), pp281-284 (2004)

  10. 紫サツマイモ
      須田郁夫
    農林水産研究研究文献解題「食品の生体調節機能に関する研究」(農林水産技術会議事務局編), 30, p322-327 (2004)

  11. 紫いもをとれば、含まれているアントシアニンの効果で肝機能が改善します
      須田郁夫
    「肝機能をぐんぐん高める100のコツ」, 主婦の友社(東京), pp111-115 (2004)

 抗酸化作用 

 活性酸素・フリーラジカルの過剰生産は、細胞への酸化的ダメージを引き起こし、老化、発がん、動脈硬化症、その他の生活習慣病の発症要因と考えられています。そのため、フリーラジカルを消去し脂質過酸化を阻害する抗酸化性物質は、生活習慣病予防成分として近年大いに期待されています。 

 紫サツマイモ抽出液の抗酸化活性・ラジカル消去活性は、切り口の色が白色、黄色、オレンジ色のイモ抽出液に比べて高いです(図4-1)。

図4-1 サツマイモの抗酸化活性

図4-1 サツマイモの抗酸化活性

 紫サツマイモには、ビタミンCやビタミンEに加え、クロロゲン酸やイソクロロゲン酸などのカフェ酸誘導体、アシル化アントシアニンYGMなどの抗酸化性成分が含まれています(図4-2)。これらの中で紫サツマイモにおいて特に重要な抗酸化性成分は、カフェ酸誘導体とアシル化アントシアニンです。

図4-2 紫サツマイモに含まれる抗酸化性成分

図4-2 紫サツマイモに含まれている抗酸化性成分


参考文献等
  1. High tert-butylperoxyl radical scavenging activities of sweet potato cultivars with purple flesh
      Furuta S., Suda I., Nishiba Y., and Yamakawa O.
    Food Sci. Technol. Int. Tokyo, 4(1), p33-35 (1998)

  2. 紫サツマイモを原材料としたチップスのラジカル消去活性
      沖智之, 増田真美, 古田收, 西場洋一, 須田郁夫
    日本食品科学工学会誌, 48(12), p926-932 (2001)

  3. Involvement of anthocyanins and other phenolic compounds in radical-scavenging activity of purple-fleshed sweet potato cultivars
      Oki T., Masuda M., Furuta S., Nishiba Y., Terahara N., and Suda I.
    J. Food Sci., 67(5), p1752-1756 (2002)

  4. Simple and rapid spectrophotomeric method for selecting purple-fleshed sweet potato cultivars with a high radical-scavenging activity
      Oki T., Osame M., Masuda M., Kobayashi M., Furuta S., Nishiba Y., Kumagai T., Sato T.,
      and Suda I.
    Breeding Sci., 53(2), p101-107 (2003)

  5. 紫サツマイモに含まれる抗酸化成分
      沖智之, 須田郁夫
    農業技術, 59(7), p299-304 (2004)

  6. 紫色の肉色をもつカンショの強い抗酸化能とラジカル消去能
      古田收, 須田郁夫, 西場洋一, 山川理, 松ケ野一郷, 杉田浩一
    平成8年度九州農業研究成果情報(畑作・流通加工), 第12号(上巻), p95-96 (1997)

  7. 抗酸化活性の高い紫カンショを選抜するための簡便な測定法
      須田郁夫, 沖智之, 納 美由紀, 増田真美, 小林美緒, 佐藤哲生, 古田收, 西場洋一,
      高畑 康浩, 吉永優, 田中勝, 熊谷亨
    平成14年度九州沖縄農業研究成果情報(畑作), 第18号, p99-100 (2003)

 紫サツマイモアントシアニンの体内吸収 

 紫サツマイモに含まれるアントシアニンは体内吸収されます(図4-3)。興味あることは、投与液に含まれていたアントシアニンがそのまま(無傷のまま)の形で血漿中に検出されることです。吸収されたアシル化アントシアニンYGM-5b (peonidin 3-caffeoylsophoroside-5-glucoside、MW=949)などは、循環系を通じて目標臓器に到達し、in vitro(試験管内)と同様にin vivo(生体内)でもその機能を発現するであろうと推測できます。実際、紫サツマイモアシル化アントシアニン濃縮物をラットに経口投与すると、血漿の抗酸化活性は高まっています。

図4-3 アントシアニンの体内吸収

図4-3 紫サツマイモに含まれているアントシアニンの体内吸収

参考文献等
  1. Direct absorption of acylated anthocyanin in purple-fleshed sweet potato into rats
      Suda I., Oki T., Masuda M., Nishiba Y., Furuta S., Matsunaga K., Sugita K.,
      and Terahara N.
    J. Agric.Food Chem., 50(6), p1672-1676 (2002)

  2. 紫サツマイモ「アヤムラサキ」アントシアニンの体内吸収性と生理作用
      須田郁夫, 沖智之, 増田真美, 小林美緒, 永井沙樹, 竹市美和子, 西場洋一, 松ケ野一郷,
      杉田浩一, 福井敬一, 寺原典彦
    平成16年度九州沖縄農業研究成果情報(流通加工), 第20号(2005印刷中)


 肝機能改善効果 

 今日、働き盛りの日本人の3人の1人が脂肪肝などの肝機能障害を持つと言われ、その予防効果を持つ食品が注目されています。

 紫サツマイモ「アヤムラサキ」から作ったジュースや紫サツマイモアントシアニン含有物は、四塩化炭素(CCl4)で誘発されるラットの急性肝障害を軽減します(血中のGOT、GPTの値が下がります)(図4-4)。

図4-4 ラット肝障害

図4-4 紫サツマイモジュース飲用による四塩化炭素誘発ラット肝障害の軽減効果

 また肝機能要注意者16名(γ-GTP高値者10名、GOT高値者11名、GPT高値者12名)を対象にし、通常の食事やアルコール類などの飲食は維持しながら紫サツマイモジュース(120mL)を毎日1本ずつ44日間飲用してもらうボランティア試験では、飲用を続けていると血清のγ-GTP、GOT、GPT値が次第に正常レベルまで回復する人がいることが明らかにされています(図4-5)。肝機能を回復した人たちの大半は肝機能要注意と指摘されてから5年未満の者であり、紫サツマイモジュースの効力は軽度の肝機能障害者に対して効果的に発現されると推測されます。

図4-5 肝機能要注意者

図4-5 肝機能要注意者の血清γ-GTP・GOT・GPT値に
対する紫サツマイモジュースの飲用効果

参考文献等
  1. 紫甘しょジュース飲用ラットにおける四塩化炭素誘起肝障害の軽減
      須田郁夫, 古田收, 西場洋一, 山川理, 松ケ野一郷, 杉田浩一
    日本食品科学工学会誌, 44(4), p315ー318 (1997)

  2. 高アントシアニンカンショジュース飲用による血清γ-GTP, GOT, GTP値の変動
      須田郁夫, 山川理, 松ヶ野一郷, 杉田浩一, 竹熊宜孝, 入佐孝三, 徳丸文康
    日本食品科学工学会誌, 45(10), p611-617 (1998)

  3. 紫色のカンショジュース飲用ラットにおける四塩化炭素誘起肝障害の軽減
      須田郁夫, 古田收, 西場洋一, 山川理, 松ケ野一郷, 杉田浩一
    平成8年度九州農業研究成果情報(流通加工・畑作), 第12号, p461-462 (1997)

  4. 紫色のカンショジュース飲用による肝機能要注意者のγ-GTP・GOT・GPT値の低下
      須田郁夫, 山川理, 松ケ野一郷, 杉田浩一, 竹熊宜孝, 入佐孝三, 徳丸文康
    平成9年度九州農業研究成果情報(流通加工・畑作), 第13号, p509-510 (1998)

  5. 紫色カンショジュースの肝障害軽減効果
      作物開発部流通利用研究室
    九州農業試験場における最近の主要研究成果 第4集, p11 (1998)

 血圧上昇抑制効果   

 血圧が高いことも気になる症状です。高血圧自然発症ラットを用いた試験では、紫サツマイモアントシアニン含有物を給餌している期間中は最大(収縮期)血圧が下がっています(図4-6)。

図4-6 SHRラットの血圧上昇抑制効果

図4-6 紫サツマイモアントシアニン(PSP-ANT)含有物長期給餌
     による高血圧自然発症ラットの血圧上昇抑制効果


 また最大血圧が140mmHg以上の高血圧者を対象にした紫サツマイモジュース連続飲用ボランティア試験では、被験者12名のうち2名が20mmHg以上の低下、4人が10〜20mgHgの血圧低下を示すことが明らかにされています(図4-7)。

図4-7 高血圧者

図4-7 高血圧者の最大(収縮期)血圧に及ぼす紫サツマイモジュースの飲用効果

参考文献等
  1. 紫サツマイモ「アヤムラサキ」から調製したアントシアニン含有物の高血圧自然発症ラットに対する血圧降下作用
      小林美緒, 沖智之, 増田真美, 永井沙樹, 福井敬一, 松ケ野一郷, 須田郁夫
    日本食品科学工学会誌, 52(1), p41-44 (2005)

  2. 高アントシアニンカンショジュース飲用による血清γ-GTP, GOT, GTP値の変動
      須田郁夫, 山川理, 松ヶ野一郷, 杉田浩一, 竹熊宜孝, 入佐孝三, 徳丸文康
    日本食品科学工学会誌, 45(10), p611-617 (1998)

  3. 紫サツマイモ「アヤムラサキ」アントシアニンの体内吸収性と生理作用
      須田郁夫, 沖智之, 増田真美, 小林美緒, 永井沙樹, 竹市美和子, 西場洋一, 松ケ野一郷, 杉田浩一,
      福井敬一, 寺原典彦
    平成16年度九州沖縄農業研究成果情報(流通加工), 第20号(2005印刷中)

 血液サラサラ効果   

 血液がスムーズに流れていることは、健康な身体を維持し、脳梗塞や心筋梗塞などを予防する上で重要です。しかし、近年の食生活の乱れとストレスの多い現代社会を反映して、血液流動性の悪い(血液がドロドロとなった)方が多くなってきています。血液流動性は日々に変わり、例えば、働き盛りの中年男性が飲まず食べずに徹夜仕事をしていますと、血液は一変してドロドロ状態となります。

 ネズミでもストレス(飲食制限・手足の拘束)が2回加わると血液がドロドロ状態になります。しかし、2回目のストレスを与えた直後に紫サツマイモアントシアニン含有物をラットに飲ませておきますとその血液はサラサラ状態になります(図4-8)。その効果は飲んでから1時間で発現されます。

図4-8 ストレス負荷のラット血液サラサラ

図4-8 紫サツマイモ含有物飲用によるストレス負荷ラットの血液流動性の改善

 またベンチャー企業(株)SAKURA INC.にて実施中のヒトボランティア試験でも、紫色のサツマイモジュース飲用により血液がサラサラになることが確認されつつあります。どのようなタイプの紫サツマイモ飲料が効果を示すのか、またどのようなタイプの方々に効果が発揮されるかなどのデータは、時期を見て公表する予定です。今しばらくお待ちください。
参考文献等
  1. 紫サツマイモ「アヤムラサキ」アントシアニンの体内吸収性と生理作用
      須田郁夫, 沖智之, 増田真美, 小林美緒, 永井沙樹, 竹市美和子, 西場洋一, 松ケ野一郷, 杉田浩一,
      福井敬一, 寺原典彦
    平成16年度九州沖縄農業研究成果情報(流通加工), 第20号(2005印刷中)

  2. 紫サツマイモに含まれる色素アントシアニンは血液をサラサラにし血圧を下げる
      九州沖縄農業研究センター
    報道発表プレスリリース (2004.03.25)

  3. 食品の効能実証試験を実施することができる食と医が提携したバイオベンチャー企業「(株)SAKURA INC.」が始動
      九州沖縄農業研究センター
    報道発表プレスリリース (2004.03.25)


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